少しずつパーソナルトレーナー向けのビジネスセミナーが増えてきています。
そうしたセミナーの説明文の中で、【セッション数の多さ】を謳い文句にしているビジネスセミナーをいくつか見かけます。
セッション数が多いということは、それだけクライアントを多く抱えているということなので、素晴らしいことなのですが、ビジネスセミナーの謳い文句として使うには、少し疑問があります。
なぜなら、セッション数が多いトレーナーは職人型になりやすく、次のビジネス展開に苦戦している場合がほとんどだからです。
とくに月間セッション数が150本を超えてくるとセッション時間が多くなりすぎて、経営に回す時間が無いものです。
これは、沢山のセッション数をこなしているトレーナーが口を揃えて言うことです。
そのためトレーナーの中には、経営をするために、セッションを辞め、経営に専念する人も出てくるくらいです。
ということが、
月間セッション数が増えてくると分かるのですが、若手トレーナーや独立したてのトレーナーは、沢山のセッション数をこなしているトレーナーがスゴいと感じてしまいがちです。
この感覚は、職人的な観点では間違いではありませんが、先ほどもお話したように、ビジネスの観点から見ると間違いである場合がほとんどです。
本日は、ビジネスにおいて、セッション数が多いトレーナーがスゴいと思ってはいけない理由についてお話させて頂きます。
セッション数が多いことが悪いわけではありません。
まずはじめに、誤解の無いようにお話したいことがあります。
それは、パーソナルトレーナーとして、セッション数が多いことが悪いことではないし、それについて否定もないということです。
特にトレーナー歴1〜3年くらいの経験年数の浅いパーソナルトレーナーさんは、沢山のセッションをこなす必要があります。
これは、今、大活躍されているパーソナルトレーナーさんが誰しも口にする言葉ですし、異業種の経営者に話を聞いても、同じ答えが返ってきます。
その答えとは、
圧倒的な量(quantity)が質(Quality)を生み出す
ということです。
圧倒的な量をこなしていない人が質を語ることは出来ません。
トレーナーであれば、圧倒的なセッションの経験数
ソムリエであれば、圧倒的な試飲したワインの数
スポーツ選手であれば、圧倒的な試合数(場数)
と言った感じでしょうか。
このように、圧倒的な量を経験することがプロフェッショナルになる上で必要なことは間違いありません。
月間セッション数が100本にも満たないトレーナーが『私は質にこだわっているんで、、、』と言っても、全く説得力が無いのです。
まずは、圧倒的な量を経験し、その経験から導き出された質を向上させていくことをトレーナーを生業としたい場合は必ずやってください。
これがプロフェッショナルとしてパーソナルトレーナーをやっていく上で必要なことの1つなのは間違いありません。
その点は誤解が無いようにしたかったので、お話しました。
セッション数が多いトレーナーがスゴいと思ってはいけない理由
このような前提を踏まえて、ビジネスにおいて、セッション数が多いトレーナーがスゴいと思ってはいけない理由についてお話をしたいと思います。
その理由は以下の3つです。
- セッション以外の時間が無いから
- 次のビジネスの準備をする時間が無いから
- だんだん歳を取っていくから
1.セッション以外の時間が無いから
今回のお話をする最も大きな理由は、セッション数が増えると使える時間が減るというものがあります。
人に与えられた時間は平等に24時間です。
その24時間をどのような配分で使っていくかで、ビジネスで成功をおさめることが出来るかが決まります。
たとえば、月間セッション数が200本を超えているパーソナルトレーナーがいるとします。
このトレーナーさんの月の稼働日が25日だったとします。
そうすると、1日のセッション数は、8本となります。
つまり、最低8時間はセッションで潰れてしまう時間ということになります。
(今回、1セッションを1時間と設定しています)
これだけで1日の3分の1が終わってしまうことになります。
さらに言うと、この計算は、セッションが空き時間無く入っていた場合なので、通常はもう少し時間が必要だと考えられます。
施設までの移動時間
始業前の準備
セッションとセッションの間の入れ替え時間
クライアントのカルテの記入
終了後の仕事
などを入れると10〜12時間は必要なのではないかと推測されます。
これに人間が必ず必要な時間(食事・入浴・排泄)が1日2時間程度と言われているので、それらを加えると12〜14時間になります。
これに、睡眠時間(仮に8時間とする)を加えると20〜22時間は動かすことの出来ない時間ということになります。
ということは、月間セッション数が200本を超えているパーソナルトレーナーが、1日に自由に使える時間は2〜4時間ということになります。
これに自分のトレーニングの時間を入れたら、大変なことになりそうですね。。。
もちろん、食事の時間を短くする、睡眠時間を短くするなどして時間を捻出することが出来るとは思いますが、時間のやりくりに追われることになることは間違いありません。
もう1つ大切なことは、今の計算は、1ヶ月の稼働日が25日だと仮定しての話だということです。
これが、週休2日(22〜23日稼働)となるともっと自由な時間が短くなります。
休みの日にビジネスの事を考えるというのは、今回は無しでお願いします。
それは、休みの日ではないので。
2.次のビジネスの準備をする時間が無いから
1でお話したように、セッション数が増えることで、自由に使える時間がどうしても減ってしまいます。
そうなると、じっくりと腰を据えて、次のビジネス展開を準備することが出来ません。
これが、1人オーナーでマイクロジムを開業している多くのトレーナーが直面している現状の問題です。
これを解消しようとして、人を雇用すると売上が下がってしまうため、新しくトレーナーを入れることもなかなか出来ず、ビジネスがそのまま停滞しているということはよくあることです。
セッションをするという職人部分の時間ばかりでなく、1人の経営者として時間を使うことがビジネスをさらに飛躍させるためには必要不可欠です。
(ここでいうビジネスの飛躍とは、業務内容だけでなく、売上を拡大していくことも指します)
3.だんだん歳を取っていくから
これも誰にでも起こることですが、年を重ねるごとに人は年老いていきます。
10年前に出来たことが、その後、20年、30年、40年と続けていけるかは非常に疑問です。
なぜなら、パーソナルトレーナーは肉体労働であり労働集約型のビジネスだからです。
先ほど例に挙げた月間セッション数が200本を超えているパーソナルトレーナーさんの事例で言えば、
その生活を10年、20年、30年、40年と続けていけるでしょうか?
独り身なら、可能かもしれませんが、結婚して、子供が出来て、家族が増えて、、、
となったら、同じような時間の使い方で仕事ができるでしょうか?
答えは明らかですよね?
このようなことから、少しずつ仕事の質を上げ、仕事内容を変化させていくことがパーソナルトレーナービジネスにおいては重要になります。
この観点で見ると◯年連続月間セッション数200本というのが、ビジネス的な観点から見ると微妙なことがお分かりいただけるかと思います。
パーソナルトレーナーが将来に向けてやるべきことは?
先ほどもお話したように、経験が少ない若手トレーナーやセッション経験数が少ないトレーナーは沢山のセッション数をやるためにクライアント獲得を一生懸命行う必要があります。
それが出来て、ある程度の経験を積んだパーソナルトレーナーが将来に向けてやるべきことがあります。
それは、
今までの経験(量)を質に変えて、新たな商品やサービスを展開する!
ということです。
世界最高の経営思想家とも言われるピーター・ドラッカーはこんな言葉を残しています。
「企業の目的は顧客の創造である」
売上や利益をあげることが企業の第1の目的ではありません。
ドラッカーは企業の目的の定義は1つしかないと説いています。
それが「顧客の創造」なのです。
今、提供されているパーソナルトレーニングも顧客の創造をしていると思います。
ですが、ビジネスにおいて発展していくためには、新たに顧客を創造していく必要があります。
それを経験の浅いトレーナーがやることはなかなか難しいです。。。
それが出来るのは、経験豊富で知恵があり、周りに協力してくれるソリューションを持っているトレーナーなのです。
今年どれだけ新たな顧客を生み出しましたか?
沢山のセション数をこなし、日々忙しく活動されているパーソナルトレーナーさんに質問です。
今年どれだけ新たな顧客を生み出しましたか?
従来のパーソナルトレーニングのクライアントではなく、従来の活動では、サービスを届けることが出来なかった新たな顧客がどのくらいいますか?
既存のクライアントを大切にすることは重要です。
それと同じくらい、あなたの商品やサービスを必要としている人に、あなたの商品やサービスを新たに届けることは重要です。
なぜなら、経営は人が人のために行う活動だから。
まとめ
セッション数を沢山こなすことは、パーソナルトレーナーにとって重要です。
ですが、あなたのステージや時期によってその重要度は異なります。
必ずしもビジネスにおいて、セッション数が重要だということはありません。
なぜなら、職人としての沢山の時間活動することで、経営者としての活動する時間がなくなっていくからです。
セッション数が多いトレーナーさんが、経営的観点から必ずしも優れているとは限らないのです。
現場という職人としての領域、そして、ビジネスという経営者としての領域の両方をバランス良くこなしているパーソナルトレーナーが、ビジネスにおいて成功できるのではないでしょうか?